第1章リストラされそう?兆候と最初にやること、退職勧奨と解雇の違い
この章の要点
- 「退職勧奨」は会社からのお願いで、応じるかどうかは本人が決められます。「解雇」は会社が一方的に契約を終わらせることで、法律の厳しい制限があります。
- 最初の数日でやることは、記録を始める・規程を手元に置く・家計を把握するの三つです。退職届は出さず、その場で書類にサインもしません。
- 会社からの退職勧奨で辞めた場合、失業給付では原則として「特定受給資格者」(いわゆる会社都合)の扱いになります。ただし、常設の早期退職制度に自分から応募した場合は該当しません。
よく挙げられる兆候
指南記事でよく挙がるのは、次のようなものです。どれも「あれば必ずリストラ」というものではありません。複数が重なったときに備え始める目安と考えてください。
- 会社の業績の悪化、部門の縮小・統合の発表
- 上場企業なら「希望退職の募集」の適時開示(同業他社で続いている場合も含む)
- 急な配置転換や、仕事・部下を外される
- 評価が理由の説明なく下がる
- 人事や上司との個別面談が、名目のはっきりしないまま設定される
会社の置かれた状況によって、会社の出方も交渉の余地も変わります。見分け方は第3章 黒字リストラと赤字リストラで扱います。
退職勧奨と解雇は別物
退職勧奨:応じるかどうかは本人が決める
退職勧奨は、会社が社員に「辞めてもらえないか」と働きかけることです。法律上は、社員が自分の意思で退職に合意するよう促す行為にとどまります。したがって、断ることができます。断ったことを理由に不利益な扱いをしてよい、という決まりはありません。
ただし、何度も呼び出す、長時間にわたる、大声や威圧を伴うなど、本人の自由な判断を妨げるほどの勧奨は、違法な退職強要とされることがあります。どこからが違法かは事情しだいで、個別の判断になります。面談での向き合い方は第9章で詳しく書きます。
解雇:会社の一方的な契約終了には厳しい制限がある
解雇は、会社が社員の同意なしに雇用契約を終わらせることです。主なルールは次のとおりです。
- 客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効(労働契約法16条)
- 少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払う必要がある(労働基準法20条)
- 社員が求めれば、会社は解雇の理由を書いた証明書を遅滞なく渡さなければならない(労働基準法22条)
経営不振による人員削減(整理解雇)では、裁判例で次の4点が重視されます。①人員削減の必要性、②配置転換・出向・希望退職の募集など解雇を避ける努力、③対象者の選び方の合理性、④労働者側との十分な協議。
失業給付での扱い
ハローワークの基準では、「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」は特定受給資格者に当たります。解雇(本人の重大な責任による解雇を除く)も同じです。
一方で、以前から常に設けられている早期退職優遇制度に応募して辞めた場合は該当しないと明記されています。「希望退職」と名前がついていても、それが今回の人員削減のための募集か、常設の制度かで扱いが分かれうるということです。給付日数などの差は第11章で扱います。
最初の数日でやること
最初の数日でやってはいけないこと
相談先
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署の中にある無料相談)
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 弁護士・社会保険労務士
退職勧奨が違法な強要に当たるか、解雇が有効かといった判断は、個別の事情によって分かれます。この章は一般的な説明で、個別の判断は相談先で確かめてください。
この章で記録しておくこと
- 兆候に気づいた日と、その内容(発表・配置転換・評価の変化など)
- 面談の案内が来た日時、名目、案内した人
- 就業規則・退職金規程を確認した日と、確認できた・できなかった箇所
この章のチェックリスト
- 兆候に気づいた日と内容を記録した
- 退職勧奨は断れること、解雇とは別物であることを理解した
- 退職届をまだ出していない
- 就業規則・退職金規程・労働条件通知書を確かめた
- 家計を1枚にまとめた
- 相談先を一つ控えた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない解雇は無効(労働契約法16条) | 兵庫労働局「解雇・退職」https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/kaiko_taishoku.html | 2026-09-30 |
| 解雇は30日前予告または30日分以上の平均賃金(労働基準法20条) | 同上 | 2026-09-30 |
| 請求があれば解雇理由証明書を遅滞なく交付(労働基準法22条) | 同上 | 2026-09-30 |
| 整理解雇で重視される4つの要素 | 同上 | 2026-09-30 |
| 退職勧奨による離職は特定受給資格者、常設の早期退職優遇制度への応募は該当しない | ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html | 2026-09-30 |
| 自由な判断を妨げる執拗な勧奨は違法な退職強要とされうる | 弁護士・専門メディアの解説が一致(下記) | 2026-09-30 |
| リストラの兆候の例 | 経験則・指南記事 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- SmartHR Mag.「『退職勧奨』は解雇と違う? リストラ時の注意点を弁護士が解説」https://mag.smarthr.jp/hr/procedure/taishoku-kansho/(退職勧奨と解雇の法的性質の違い)
- 弁護士ナビ「退職勧奨とは? 不当な退職勧奨を受けた場合の対応方法」https://www.ben54.jp/trouble/labor/co_73(違法な退職強要の目安)
- freee「退職勧奨とは」https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/retirement-recommendation/(会社側から見た手続き)
- 東京労働局「しっかりマスター 解雇編」https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/seido/kijunhou/shikkari-master/pdf/kaiko.pdf(解雇ルールの公的解説)