10-1競業避止義務と転職|同業他社への就職制限はどこまで有効か(第1節/全3節)
この章の要点
- 退職後に同業他社で働かないという約束(競業避止義務)は、憲法が保障する職業選択の自由を制約するため、必要で合理的な範囲でしか有効とされません。
- 有効かどうかは、①守るべき会社の利益、②本人の地位、③地域の限定、④期間、⑤禁止される行為の範囲、⑥代償措置、を総合して判断される、と経済産業省は整理しています。
- 競業避止と秘密保持は別の約束です。競業避止が無効でも、会社の営業秘密を使ってよいことにはなりません。
競業避止義務とは
在職中の社員は、会社と競合する活動をしない義務を負うと一般に考えられています。問題になるのは退職後です。退職後の制限は、就業規則、入社時や退職時の誓約書、退職合意書などに書かれることがあります。
リストラの場面では、退職合意書に「退職後○年間、競合する会社に就職しない」といった条項が入っていることがあります(第9章)。次の職場の選択肢を狭めるおそれがあるので、サインする前に確かめます。
有効かどうかの判断のポイント
経済産業省の資料「競業避止義務契約の有効性について」は、裁判例をもとに、次の点を総合して判断すると整理しています。
| ポイント | 見られること |
|---|---|
| 守るべき会社の利益 | 営業秘密や、それに準じる独自のノウハウなど、守る必要のある利益があるか |
| 本人の地位 | 形式的な役職ではなく、守るべき情報に実際に触れる立場だったか |
| 地域の限定 | 制限する地域が必要な範囲に絞られているか(業種や事業の広がりによって判断は変わる) |
| 期間 | 制限の期間が必要な長さに絞られているか |
| 禁止される行為の範囲 | 「同業他社への就職すべて」のように広すぎないか、特定の顧客への営業など絞られているか |
| 代償措置 | 制限と引き換えの手当や、退職金の上乗せなどがあるか |
期間については、1年以内は認められやすく、2年を超えると厳しく見られやすい、とする解説が多くあります。ただし、期間だけで決まるものではなく、他のポイントと合わせて判断されます。