第7章リストラ面談の記録の残し方|メモ・録音・メールの保存方法
この章の要点
- 記録は「日時・場所・相手・言われたこと・自分が答えたこと」を、その日のうちに残すのが基本です。
- 残した記録は、失業給付の離職理由の確認、条件の交渉、労働局のあっせん、労働審判などで、自分の説明を支える材料になります。
- 記録は自分の体験と、自分宛ての書面・メールを中心にします。社外秘の資料を持ち出すと、別の問題を招くことがあります。
なぜ記録が要るのか
退職勧奨やリストラの場面では、後から「言った・言わない」が争いになりがちです。会社側は面談の記録を残していることが多い一方、社員側は何も残していないことがよくあります。記録は、次のような場面で自分の説明を支えます。
- 失業給付の離職理由:会社が離職票に書いた理由と自分の認識が違うとき、ハローワークで異議を申し立てられます。その際、勧奨を受けた経緯を示す材料になります(第11章)。
- 条件の交渉:面談で示された条件や約束を、後で確かめるときに使えます(第9章)。
- 労働局の「あっせん」:都道府県労働局の紛争調整委員会が間に入り、話し合いでの解決を手伝う制度です。無料で、非公開です。労働者・会社のどちらからでも申し込めます。
- 労働審判:地方裁判所で、裁判官1人と労働関係の専門家2人が、原則3回以内の期日で審理する手続きです。結果に異議が出れば訴訟に移ります。
なお、労働局の相談・助言・あっせんを利用したことを理由に、会社が不利益な扱いをすることは法律で禁じられています。
何を記録するか
面談ごとに
- 日時(開始と終了)、場所
- 同席者の名前と役職
- 会社側が言ったこと(できるだけ言葉どおりに)
- 自分が答えたこと
- 示された条件(割増退職金、退職日、有休の扱い、再就職支援)と回答の期限
- 渡された書面の名前と枚数
面談以外で
- 配置転換・仕事の取り上げ・評価の変更があった日と内容
- 会社からのメール、社内チャット、配布資料(自分宛てのもの)
- 体調の変化、通院した日(心身の不調が出た場合)
- 相談した先(労働局、弁護士など)と日付、受けた説明
どう残すか
手書きメモ・ノート
面談の直後に、時系列で書きます。日付を入れ、後から書き足した部分は分かるようにします(色を変える、「追記」と書くなど)。ページを破らないノート1冊にまとめると、順番が崩れにくくなります。
自分宛てのメール
面談の要点を、その日のうちに自分の私用メールアドレスに送る方法もあります。送信日時が残るため、いつ書いたかを示しやすくなります。
録音
面談を録音する人もいます。相手に断らない録音(いわゆる秘密録音)でも、民事の手続きで証拠として扱われることは多い、と解説されています。ただし、録音の仕方がひどく不当な場合は扱いが変わりうるとされ、職場の規則で録音が禁止されている場合の扱いも含めて、判断は個別の事情によります。録音するかどうか迷う場合は、弁護士に確かめてください。録音した場合も、日時と相手を書いたメモを別に残します。
書面・メールの保存
受け取った書面は、原本を保管し、写真やスキャンでも残します。メールは会社のシステムが使えなくなる前に、自分宛ての書面・メールに限って内容を控えておきます。
やってはいけない記録
- 社外秘の資料を持ち出す・私物にコピーする:就業規則や秘密保持の約束に反することがあり、懲戒や損害賠償の問題になりえます(第10章)。
- 他人の個人情報を持ち出す:同僚の評価や人事情報などです。
- 記録を後から都合よく書き換える:記録全体の信用を損ないます。
保管場所
- 会社のパソコン・会社のクラウドには置かない(退職や異動でアクセスできなくなる)
- 自宅に原本、私用のクラウドなどに写し、の2か所に分ける
- 家族に保管場所を伝えておく
相談先
- 総合労働相談コーナー(相談・助言・あっせん。無料)
- 法テラス、弁護士(録音の扱いなど個別の判断)
この章で記録しておくこと
- 記録を始めた日と、記録に使うノート・ファイルの名前
- 原本と写しの保管場所(家族にも伝えた日)
- 記録を見せた相談先と、その日付
この章のチェックリスト
- 記録用のノート(またはファイル)を1つ決めた
- 直近の面談・出来事を日時・相手・内容つきで書いた
- 受け取った書面を原本と写しの2か所で保管した
- 会社の機器・クラウドに記録を置いていない
- 社外秘の資料は持ち出していない
- 相談先(総合労働相談コーナー)を控えた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 個別労働紛争解決制度(相談・助言指導・あっせん)は無料、あっせんは簡易・迅速・秘密厳守、労使どちらからも利用可 | 厚生労働省「個別労働紛争解決制度」https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/index.html | 2026-09-30 |
| 制度の利用を理由とする不利益取扱いは法律で禁止 | 同上 | 2026-09-30 |
| 労働審判は原則3回以内の期日、審判官1人と審判員2人、異議で訴訟に移行 | 裁判所「労働審判手続」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/roudousinpan/index.html | 2026-09-30 |
| 秘密録音も民事手続で証拠として扱われることが多い(例外あり) | 弁護士の解説記事の一般的な見方(判例の原文は未確認) | 2026-09-30 |
| 自分宛てメールで送信日時を残す方法 | 指南記事で広く勧められている方法 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- 東京地方裁判所「労働審判手続の注意書」https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/roudou_sinpan/roudou_sinpan_tyuuisyo/index.html(労働審判の流れ)
- 弁護士ナビ「退職勧奨とは? 不当な退職勧奨を受けた場合の対応方法」https://www.ben54.jp/trouble/labor/co_73(記録の重要性)
- SmartHR Mag.「『退職勧奨』は解雇と違う?」https://mag.smarthr.jp/hr/procedure/taishoku-kansho/(面談の記録)