第9章退職勧奨の面談の向き合い方|断り方と退職合意書の確認点
この章の要点
- 退職勧奨は会社からのお願いで、断ることができます。その場で答える必要も、書類にサインする必要もありません。
- 応じるかどうかを考えるために、条件は書面でもらい、持ち帰って比べます。
- 退職合意書では、①退職理由(会社都合か自己都合か)、②割増退職金の額と支払日、③有休の扱い、④退職日、⑤競業避止・秘密保持・清算条項、を必ず確かめます。
面談で何が起きるか
退職勧奨の面談では、一般に次のような流れがよく見られます。
- 会社の状況の説明(業績、組織の見直し)
- 本人の評価や役割についての説明(「今の部署では役割が用意できない」など)
- 希望退職や退職の提案と、条件の提示
- 回答の期限の提示
面談は1回で終わらず、複数回にわたることがあります。回を追うごとに条件が変わることも、配置転換などの話が出ることもあります。
その場で答えない・サインしない
- 答えは持ち帰る:「家族と相談して、条件を確かめてから返事をします」と伝えれば十分です。
- サインしない:退職合意書、退職届、誓約書などは、面談の場で出されても、持ち帰って読みます。
- 条件は書面で:口頭で言われた条件は、書面かメールで出してもらうよう頼みます。出してもらえない場合は、自分で記録します(第7章)。
断り方
断る場合は、はっきり、短く伝えます。
- 例:「退職するつもりはありません。今の仕事を続けたいと考えています」
- 理由を詳しく説明する義務はありません。
- 断ったあとも勧奨が続く場合は、そのつど記録します。
退職勧奨は、本人が自由に判断できる範囲でのみ許されます。何度も呼び出す、長時間にわたる、大声や威圧を伴う、断っているのに執拗に続けるといった勧奨は、違法な退職強要とされることがあり、損害賠償が認められた裁判例もあると解説されています。どこからが違法かは、回数・期間・言動など個別の事情で判断されます。こうした状況になったら、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
応じる場合に聞いておくこと
退職合意書で必ず確かめる点
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 退職理由 | 「会社の勧奨による合意退職」など、会社からの勧奨であることが分かる書き方か。「一身上の都合」となっていないか。失業給付の扱いに関わります(第11章) |
| 退職日 | 有休を消化し終える日になっているか |
| 割増退職金 | 金額、支払日、支払方法が明記されているか |
| 有休 | 消化するのか、買い取るのか |
| 競業避止 | 同業他社への就職を制限する条項がないか、あるなら期間・範囲・代償は(第10章) |
| 秘密保持 | 範囲が広すぎないか |
| 清算条項 | 「この合意書に定めるもの以外に債権債務がないことを確認する」といった条項。サインすると、未払いの残業代などを後で請求しにくくなることがあります |
| 口外禁止 | 条件を他人に話さない約束。家族や専門家への相談まで禁じていないか |
内容に不安があるときは、サインする前に弁護士や社会保険労務士に見てもらいます。
ハローワークの扱い
ハローワークの基準では、事業主から退職するよう勧奨を受けて離職した人は、特定受給資格者(いわゆる会社都合)に当たります。離職票の離職理由が自分の認識と違う場合、ハローワークで異議を申し立てられます。その際、面談の記録や合意書が材料になります。
相談先
- 総合労働相談コーナー(違法な退職強要の相談)
- 法テラス、弁護士、社会保険労務士(合意書を見てもらう)
この章で記録しておくこと
- 面談の日時、同席者、会社の説明、示された条件、回答期限
- 自分が答えた内容(断った場合はその言葉)
- 受け取った書面の名前と写し
この章のチェックリスト
- 面談ではその場で答えず、サインしないと決めた
- 条件を書面かメールで出してもらった(または自分で記録した)
- 退職合意書の退職理由・退職日・割増退職金・有休を確かめた
- 競業避止・清算条項・口外禁止の条項を確かめた
- 面談ごとの記録を残した
- 不安な点を相談する先を決めた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 退職勧奨による離職は特定受給資格者 | ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html | 2026-09-30 |
| 執拗な退職勧奨は違法な退職強要とされうる(損害賠償の裁判例あり) | 弁護士・専門メディアの解説が一致(裁判例の原文は未確認) | 2026-09-30 |
| 清算条項にサインすると後の請求が難しくなることがある | 弁護士の解説記事の一般的な見方 | 2026-09-30 |
| 面談の流れの例 | 経験則・指南記事 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- SmartHR Mag.「『退職勧奨』は解雇と違う? リストラ時の注意点を弁護士が解説」https://mag.smarthr.jp/hr/procedure/taishoku-kansho/(面談での注意点)
- 弁護士ナビ「退職勧奨とは? 不当な退職勧奨を受けた場合の対応方法」https://www.ben54.jp/trouble/labor/co_73(違法な退職強要の目安)
- 契約ウォッチ「退職勧奨とは」https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/retirement-advice/(退職合意書の条項)