第11章リストラ時のお金|失業給付・退職金の税金・保険・ローン
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この章の要点
- 45〜59歳で会社都合(特定受給資格者)になると、失業給付の日数は加入期間に応じて90〜330日(加入1年以上なら180〜330日)。自己都合だと90〜150日で、さらに原則1か月の給付制限がかかります(2025年4月以降の離職)。
- 退職金は「(退職金−退職所得控除)×1/2」に課税されるので、手取りは給与より大きく残りやすい仕組みです。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出すのを忘れないようにします。
- 辞めるか残るかを考える前に、毎月いくら足りなくなるか × 何か月を計算しておきます。
失業給付(雇用保険の基本手当)
会社都合と自己都合の違い
会社から退職勧奨を受けて辞めた人や、解雇された人(重大な自己責任による解雇を除く)は、「特定受給資格者」になります(第1章)。自分から辞めた人は、一般の離職者です。
45歳以上60歳未満の所定給付日数
| 雇用保険に入っていた期間 | 特定受給資格者(会社都合など) | 一般の離職者(自己都合など) |
|---|---|---|
| 1年未満 | 90日 | 90日(受給資格がある場合) |
| 1年以上5年未満 | 180日 | 90日 |
| 5年以上10年未満 | 240日 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 270日 | 120日 |
| 20年以上 | 330日 | 150日 |
年齢によって日数は変わります。自分の日数は、ハローワークの表で確かめてください。
自己都合の給付制限
正当な理由のない自己都合退職では、給付が始まるまでに制限期間があります。2025年4月1日以降の離職から、この期間は原則2か月から1か月に短縮されました。過去5年間に3回以上自己都合で退職している場合は3か月です。また、一定の教育訓練を受けた場合に制限が解除される仕組みも始まっています。
離職理由の確認
離職票の離職理由が自分の認識と違う場合は、ハローワークで申し立てができます。面談の記録や退職合意書が材料になります(第7章・第9章)。
失業給付を「使い切ってから」探さない
失業給付は、次の仕事を探す間の生活を支えるお金です。「給付を全部もらってから本気で探そう」と考える人もいますが、次の理由から、早めに探し始めるほうが一般に有利です。
- 早く決まると再就職手当が出る:給付の日数を一定以上残して安定した仕事に就くと、残りの日数分の基本手当の一部がまとめて支給されます。残りが所定給付日数の3分の2以上なら残日数分の70%、3分の1以上なら60%です。給付を使い切ってから就職すると、この手当は受け取れません。
- 空白期間が長いほど不利になりやすい:書類選考で空白期間の理由を聞かれやすくなる、と指南記事ではよく紹介されています(第16章)。
- 気力と生活のリズム:時間が空くほど、活動を再開するのが重くなることがあります。
- 給付の終わりが近づくと焦る:条件の合わない仕事を急いで選んでしまう例があります。
再就職手当には、待期期間の後に就職したこと、1年を超えて働く見込みがあることなどの条件があります。細かい条件は、就職が決まる前にハローワークで確かめます。
退職金と税金
退職所得の計算
退職金は、次の式で「退職所得」を出し、そこに課税されます。
(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得
退職所得控除額
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円に満たないときは80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例として、勤続30年なら控除額は 800万円+70万円×10年=1,500万円です。退職金がこの額までなら、所得税はかかりません。
申告書を忘れない
会社に「退職所得の受給に関する申告書」を出すと、会社が税額を計算して源泉徴収するので、原則として確定申告は要りません。出さないと、退職金の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。
割増退職金の扱い、勤続年数の数え方、複数の退職金がある場合などは個別に異なるので、会社の担当者や税務署で確かめてください。
健康保険と年金
健康保険の選択肢
退職すると会社の健康保険から外れます。主な選択肢は三つです。
- 任意継続:退職前の健康保険に最長2年間入り続けられます。退職日までに2か月以上続けて加入していたことが条件で、退職日の翌日から20日以内に申し込みます。保険料は会社負担分もなくなるため、在職中のおおむね2倍になります(協会けんぽの場合)。
- 国民健康保険:住んでいる市区町村で加入します。保険料は前の年の所得をもとに計算されるため、退職した直後は高くなりがちです。ただし、解雇や退職勧奨などで離職し、ハローワークで特定受給資格者・特定理由離職者と認められた65歳未満の人は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減があります。軽減の期間は、離職日の翌日の月から、その翌年度末までです。申請は市区町村の窓口で行います。
- 家族の健康保険の扶養に入る:収入などの条件があります。
どれが安いかは人によって違います。任意継続の保険料と、市区町村で試算した国民健康保険料を比べます。
年金
会社員(厚生年金)でなくなると、次の仕事が決まるまで国民年金(第1号被保険者)に切り替えます。国民年金の保険料は、2026年度で月1万7,920円です。配偶者を扶養していた場合(第3号被保険者)、配偶者も第1号に切り替わり、保険料を払う必要が出てきます。保険料の納付が難しいときは、失業を理由にした免除や猶予の制度があります。
社会保険料は馬鹿にならない
会社員の間は、健康保険・厚生年金の保険料の半分を会社が負担し、給与から天引きされていたため、額を意識しにくかったはずです。退職すると、これを全額、自分で納めることになります。
- 任意継続:会社負担分がなくなるため、保険料は在職中のおおむね2倍になります。
- 国民健康保険:前の年の所得で計算されるので、退職直後の年は高くなりがちです(非自発的失業者の軽減を使えるかを必ず確かめます)。
- 国民年金:本人だけで年21万5,040円(月1万7,920円×12か月)。配偶者も第1号になると、夫婦で年43万80円です。
- 住民税も続きます(下の「住民税は退職後も払う」)。
収入がない時期に、健康保険料・国民年金の保険料・住民税が重なると、月に数万円から十数万円の出費になる例もあります。家計の表には、この3つを必ず入れます。どれも、払えないときは減免・免除・猶予の相談ができるので、滞納する前に窓口に行きます。
住民税は退職後も払う
住民税は、前の年の所得をもとに、その年の6月から翌年5月にかけて納める仕組みです。このため、退職して収入がなくなっても、在職中の所得にかかる住民税の支払いが続きます。退職した翌年の分まで払う必要があることを、家計の計算に入れておきます。
退職した時期による払い方の違い(在職中に給与から天引き=特別徴収されていた場合)
| 退職した時期 | 払い方 |
|---|---|
| 1月〜4月 | 5月分までの残りを、最後の給与や退職金からまとめて差し引く(一括徴収)のが原則 |
| 5月 | 最後の給与から5月分を差し引いて終わり |
| 6月〜12月 | 翌年5月までの残りを、自分で納付書で払う(普通徴収)か、最後の給与や退職金からまとめて差し引くかを選べる |
6月〜12月に辞めて普通徴収になると、市区町村から納付書が届き、年4回などに分けて自分で払います。さらに、退職した年の所得にかかる住民税が、翌年6月から始まります。収入が落ちた時期に、前の高い所得にかかる住民税の納付が重なりやすいので、その分を手元に残しておきます。
退職金の住民税:退職金にかかる住民税は、ほかの所得と分けて計算され、原則として退職金を受け取るときに差し引かれます(「退職所得の受給に関する申告書」を出している場合)。
細かい扱い(納付の回数、減免の有無など)は住んでいる市区町村によって違います。所得が大きく減って払えないときは、減免や分割の相談ができるかを市区町村の税の窓口で聞きます。
家計を計算する
辞めるか残るかを考える前に、次を1枚にまとめます。
- 毎月の支出:生活費、ローン返済、教育費、保険料(退職後の健康保険・年金を含む)、住民税(退職後も前年の所得分が続く)
- 毎月の収入の見込み:失業給付(日額×日数)、配偶者の収入
- 手元のお金:貯蓄、退職金(税引き後)、割増退職金
- 不足額:(支出 − 収入)× 月数 と、手元のお金を比べる
住宅ローン:返済が苦しくなりそうなら、滞る前に借りている金融機関に相談します。返済期間の延長など、条件の変更に応じてもらえることがあります(第16章)。
教育費:大学などの進学が近い場合は、国の教育ローンや給付型奨学金などの制度も含めて計画します(第16章)。
退職金を「大金」と感じて、投資や起業にすぐ回すのは慎重に考えます。失敗の型は第16章にまとめています。
相談先
- ハローワーク(失業給付・再就職手当)
- 税務署(退職金の税金)
- 市区町村(国民健康保険・住民税・減免)
- 年金事務所(国民年金・免除)
- 借入先の金融機関、ファイナンシャルプランナー
この章で記録しておくこと
- 自分の雇用保険の加入期間と、会社都合・自己都合のどちらになる見込みか
- 退職金・割増退職金の額、勤続年数、控除額の計算
- 健康保険の選択肢ごとの保険料の試算
- 家計の表(作った日付入り)
この章のチェックリスト
- 自分の所定給付日数をハローワークの表で確かめた
- 退職所得控除額を計算した
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出すことを控えた
- 任意継続と国民健康保険の保険料を比べた
- 家計の不足額と、何か月もつかを計算した
- 再就職手当の条件を確かめ、給付を使い切る前に探し始めると決めた
- 計算した日付と前提を記録した
- 退職後に払う住民税の額と、払い方(一括・普通徴収)を確かめた
- 退職後の健康保険料・国民年金保険料(配偶者の分も)を年額で計算した
- 国民健康保険の非自発的失業者の軽減を使えるか確かめた
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 45〜59歳の所定給付日数(特定受給資格者90/180/240/270/330日、一般90/90/90/120/150日) | ハローワーク「基本手当の所定給付日数」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html | 2026-09-30 |
| 自己都合の給付制限は2025年4月1日以降の離職から原則1か月(5年で3回以上は3か月)、教育訓練で解除 | 厚生労働省「令和7年4月1日から雇用保険制度が変わります」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html | 2026-09-30 |
| 退職所得=(収入−控除)×1/2、控除額の計算式、申告書なしは20.42%源泉徴収 | 国税庁 タックスアンサー No.1420 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm | 2026-09-30 |
| 任意継続は最長2年、2か月以上の加入、退職日翌日から20日以内、保険料はおおむね2倍 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)任意継続の案内 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/20230307_001.pdf | 2026-09-30 |
| 会社都合の離職者は国民健康保険料が軽くなる制度がある | 市区町村の案内で広く説明されている(本章では個別の原典未確認) | 2026-09-30 |
| 国民年金の保険料の免除・猶予制度 | 日本年金機構の案内として広く知られる(本章では原典未確認) | 2026-09-30 |
| 再就職手当:支給残日数が所定給付日数の2/3以上なら残日数分の70%、1/3以上なら60% | 厚生労働省・各労働局の案内(鹿児島労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/2025-1023-4_04.pdf ほか) | 2026-09-30 |
| 住民税は前年の所得に課税し6月〜翌年5月に納付、退職時期で一括徴収・普通徴収が分かれる、退職所得の住民税は受給時に差し引き | 地方税の仕組みとして解説記事が一致(オフィスステーション https://romsearch.officestation.jp/shakaihoken/taishoku/4366 、マネーフォワード https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/96454/)。市区町村の原典は本章では未確認 | 2026-09-30 |
| 国民年金保険料は令和8年度 月額17,920円 | 日本年金機構「令和8年度の国民年金保険料」https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html | 2026-09-30 |
| 非自発的失業者の国保軽減:前年の給与所得を100分の30として算定、離職日の翌日の月から翌年度末まで、65歳未満で特定受給資格者・特定理由離職者 | 新宿区 https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken02_000102.html /千葉市 https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/hoken/hijihatsutekishitugyo.html | 2026-09-30 |
参考にした記事
- J-Net21「雇用保険法の改正(2025年4月施行)」https://j-net21.smrj.go.jp/law/20250604.html(給付制限の短縮)
- 労働新聞社「給付制限解除か? 教育訓練給付の受給で」https://www.rodo.co.jp/faq/205881/(教育訓練による制限解除)
- 協会けんぽ 各支部の任意継続の案内(加入条件と保険料)