第27章リストラ・退職勧奨のよくある質問と誤解
この章の要点
- リストラの場面では、「こうすれば得」「こうしなければならない」という思い込みが、取り返しのつかない判断につながることがあります。
- 多くの誤解は、退職勧奨と解雇の違い、会社都合と自己都合の違い、書面の中身を確かめれば解けます。
- どの答えも一般的な説明です。個別の判断は相談先で確かめてください。
誤解1:「退職勧奨を受けたら、断れない」
断れます。退職勧奨は会社からのお願いで、応じるかどうかは本人が決めます。解雇とは法律上まったく別物です(第1章・第9章)。
誤解2:「退職届は早めに出したほうがいい」
自分から退職届を出すと、自己都合の退職と受け取られるおそれがあります。会社から勧奨を受けたなら、その経緯を記録し、合意書の退職理由の書き方を確かめてから判断します(第9章)。
誤解3:「会社都合になれば、何でも得」
会社都合(特定受給資格者)になると、失業給付の日数が増え、給付制限もかかりません(第11章)。ただし、割増退職金の額、退職日、有休、競業避止、清算条項など、合意書のほかの条件も合わせて比べないと、全体で損をすることがあります(第9章)。
誤解4:「希望退職に応じれば、必ず会社都合になる」
人員削減のための募集に応じた場合と、以前から常設されている早期退職優遇制度に応募した場合とで、扱いが分かれます。後者は特定受給資格者に該当しないと、ハローワークの基準に書かれています(第3章)。
誤解5:「競業避止の誓約書は、全部無効だから気にしなくていい」
退職後の競業避止は、必要で合理的な範囲でしか有効とされません。ただし、守るべき会社の利益、地位、地域、期間、行為の範囲、代償措置を総合して判断されるため、「全部無効」とは言い切れません。また、競業避止が無効でも、前の会社の営業秘密を使ってよいことにはなりません(第10章)。
誤解6:「残れば安泰」
退職勧奨を断って残っても、配置転換、降格、仕事の取り上げ、繰り返しの面談、遠方への転勤などが起こりえます。残るなら、記録を続け、撤退ラインを先に決めておきます(第14章)。
誤解7:「辞めれば楽になる」
辞めたあとも、年齢による転職の難しさや、賃金の低下が待っていることがあります。厚生労働省の調査では、55〜59歳の転職者のうち、賃金が下がった人が上がった人を上回りました(第13章)。
誤解8:「退職金はまとまったお金だから、投資や起業で増やせばいい」
退職金は、収入が途絶える期間と老後を支えるお金でもあります。大きなお金を一度に動かす前に、家計の表を作り、失敗の型を知っておきます(第16章)。
誤解9:「年金は早くもらったほうが得」
65歳より早く受け取る(繰上げ)と、1か月早めるごとに年金額が0.4%減り(1962年4月2日以降生まれ)、その減額は一生続きます。損得は寿命や家計しだいで、一概には言えません(第16章)。
誤解10:「再就職支援会社は自分の味方だから、言うとおりにすればいい」
費用を払っているのは元の会社です。支援の中身を確かめ、自分でも別のルートを持ちます(第17章・第18章)。
誤解11:「転職エージェントに登録すれば、あとは任せられる」
エージェントの報酬は採用が決まったときに入るため、決まりにくいと見た人を後回しにする、決まりそうな求人を急がせる、といった例があると言われます(仕組みは第17章)。勧める理由を聞き、決めるのは自分です(第19章)。
誤解12:「録音もメモもしなくても、何とかなる」
後から「言った・言わない」になると、記録のない側が不利になりがちです。面談の日時・相手・内容を、その日のうちに残します(第7章)。
誤解13:「相談すると会社にばれて不利になる」
都道府県労働局の相談・助言・あっせんを利用したことを理由に、会社が不利益な扱いをすることは法律で禁じられています(第7章)。
誤解14:「失業給付を使い切ってから探せばいい」
給付の日数を一定以上残して就職すると、再就職手当が出ます(残りが3分の2以上なら残日数分の70%、3分の1以上なら60%)。使い切ってからでは受け取れません。空白期間が長くなるほど選考で不利になりやすいとも言われます。給付は「探す間の支え」と考え、早めに動き始めます(第11章)。
誤解15:「同僚が応じた(残った)から、自分もそうすればいい」
同僚であっても、生き方も家族構成も家計も違います。周りに合わせず、自分の条件で判断します(第8章)。
誤解16:「支援会社が示した再就職先の例があるから安心」
示される例はほかの人の結果で、あなたに当てはまるとは限りません。安心材料にしないことが大事です(第18章)。
誤解17:「会社を辞めて収入がなくなれば、住民税はかからない」
住民税は前の年の所得にかかるため、退職後も支払いが続きます。退職した年の所得分は翌年6月から始まります。辞めた時期によって、退職金などからまとめて差し引かれるか、自分で納付書で払うかが分かれます(第11章)。
誤解18:「社会保険料は給与から引かれていた程度だから、たいしたことはない」
在職中は保険料の半分を会社が負担していました。退職後は全額を自分で納めます。任意継続なら在職中のおおむね2倍、国民年金は本人だけで年21万円あまり、配偶者を扶養していれば夫婦で年43万円ほどになります。国民健康保険は前年の所得で計算されるため、退職直後は高くなりがちです(第11章)。
誤解19:「会社の確定拠出年金は、辞めても放っておけばいい」
企業型確定拠出年金は、資格を失ってから6か月以内にiDeCoなどへ移す手続きをしないと自動移換されます。運用が止まり、手数料がかかり続け、受け取れる年齢が遅くなることもあります(第12章)。
相談先
- 総合労働相談コーナー、法テラス、弁護士(法律の判断)
- ハローワーク(失業給付)
- 年金事務所・市区町村(年金・保険・税)
この章で記録しておくこと
- 自分が思い込んでいたことと、確かめた結果
- 確かめるために相談した先と日付
この章のチェックリスト
- 退職勧奨は断れることを確かめた
- 自分の退職が会社都合か自己都合かの見込みを確かめた
- 合意書の条件を全体で比べた
- 競業避止の条項の中身を確かめた
- 思い込みと確かめた結果を記録した
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 退職勧奨・解雇の違い、特定受給資格者の範囲、常設の早期退職制度の扱い | 第1章・第3章の確認表(兵庫労働局、ハローワーク) | 2026-09-30 |
| 競業避止の判断のポイント | 第10章の確認表(経済産業省) | 2026-09-30 |
| 年齢別の転職後の賃金変化 | 第13章の確認表(厚生労働省 令和6年雇用動向調査) | 2026-09-30 |
| 繰上げ受給の減額率 | 第16章の確認表(日本年金機構) | 2026-09-30 |
| 労働局の制度利用を理由とする不利益取扱いの禁止 | 第7章の確認表(厚生労働省) | 2026-09-30 |
| 再就職手当:支給残日数が所定給付日数の2/3以上なら残日数分の70%、1/3以上なら60% | 厚生労働省・各労働局の案内(鹿児島労働局 https://jsite.mhlw.go.jp/kagoshima-roudoukyoku/content/contents/2025-1023-4_04.pdf ほか) | 2026-09-30 |
参考にした記事
- 各章の「参考にした記事」を参照