第26章内定をもらったら|承諾の前に労働条件通知書で確かめる
この章の要点
- 内定のときに一つだけ大事なことを挙げるなら、承諾する前に、労働条件を書面で確かめることです。
- 会社には、労働者を雇うときに賃金・労働時間などの労働条件を明示する義務があります。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」(将来の配置転換の見込みを含む)も明示が必要になりました。
- 面接やエージェントから聞いた条件と書面が食い違っていたら、承諾の前に確かめ、書面に反映してもらいます。
なぜ書面なのか
内定の前後には、年収、役職、仕事の中身、勤務地などの話が、面接官や転職エージェントから口頭で伝えられることがよくあります。けれども、入社後に「聞いていた話と違う」となったとき、自分を守る材料になるのは書面です。
リストラを経験した後の転職では、「早く決めたい」という気持ちから、条件を確かめないまま承諾してしまう例が指摘されています(第19章)。一度承諾すると、条件の見直しを頼みにくくなります。
労働条件の明示のルール
会社は、労働者を雇うときに、賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。2024年4月からは、明示する事項が増えました。
- すべての労働者:雇い入れ直後の就業場所と業務の内容に加えて、就業場所と業務の「変更の範囲」。変更の範囲とは、将来の配置転換などの見込みを含む、契約期間中に変わりうる範囲のことです。
- 有期契約(契約社員・嘱託など)の人:契約の更新の上限(通算の期間や回数)の有無と内容、無期転換を申し込める機会と、転換後の労働条件、など。
明示は、労働契約を結ぶときと、契約を更新するときに行われます。
承諾の前に確かめる項目
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 雇用形態・契約期間 | 正社員か、契約社員か。期間の定めがあるなら更新の条件と上限 |
| 試用期間 | 期間と、その間の給与・条件 |
| 就業場所 | 最初の勤務地と、変更の範囲(転勤の可能性) |
| 業務の内容 | 最初の仕事と、変更の範囲 |
| 賃金 | 基本給、手当、賞与の有無と算定方法、固定残業代の有無と時間数、昇給 |
| 労働時間・休日 | 始業・終業、残業の有無、休日、有給休暇 |
| 退職金・企業年金 | 制度の有無。前の会社の確定拠出年金を移せるか(第12章) |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入 |
| 入社日 | 前の会社の退職日、失業給付・再就職手当との関係(第11章) |
年収が前職より下がる場合は、家計の下限(第11章)と比べて判断します。
口頭の話と書面が違ったら
- 面接やエージェントから聞いた条件と、書面が違う点を書き出します。
- 承諾の前に、会社(またはエージェント経由)に確かめ、正しい内容を書面に反映してもらいます。
- 回答の期限が迫っていても、「条件を書面で確かめてから返事をします」と伝えてかまいません。期限を延ばせないか相談することもできます。
相談先
- 転職エージェント(条件の確認・交渉の代行)
- 都道府県労働局・労働基準監督署(労働条件の明示のルールについて)
- ハローワーク(再就職手当の手続き)
この章で記録しておくこと
- 内定の連絡を受けた日と、回答の期限
- 口頭で聞いた条件(誰から、いつ)
- 受け取った労働条件通知書などの書面と、受け取った日
- 口頭と書面の違い、確かめた日と回答
この章のチェックリスト
- 労働条件通知書(または雇用契約書)を書面で受け取った
- 就業場所と業務の「変更の範囲」を確かめた
- 賃金の内訳(固定残業代・賞与を含む)を確かめた
- 口頭で聞いた条件と書面の違いを確かめた
- 家計の下限と比べて判断した
- 内定・書面・回答のやり取りを記録した
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 2024年4月から、全労働者に就業場所・業務の変更の範囲の明示、有期契約者に更新上限・無期転換関係の明示が追加、明示は契約締結時と更新時 | 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html(ページを開いて確認) | 2026-09-30 |
| 採用時に賃金・労働時間その他の労働条件を明示する義務(労働基準法15条) | 同上・厚生労働省のリーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001298244.pdf | 2026-09-30 |
| 早く決めたい気持ちから条件を確かめずに承諾する例 | 指南記事でよく指摘される例 | 2026-09-30 |
参考にした記事
- 厚生労働省「2024年4月から、募集広告や職業紹介を受ける際に、求人企業などから明示される労働条件が追加されます」https://www.mhlw.go.jp/content/001114167.pdf(求職者向けの案内)