第15章定年延長まで生き残れますか?|65歳までの雇用と役職定年・再雇用の現実
この章の要点
- 会社には、希望する社員を65歳まで雇う措置(定年の引き上げ・継続雇用制度・定年の廃止のいずれか)が法律で義務づけられています。70歳までの就業の機会を確保することは努力義務です。
- ただし「65歳まで雇われる」ことと「今と同じ仕事・給与で働ける」ことは別です。役職定年、60歳以降の再雇用での給与の引き下げ、仕事の変化がよくある例です。
- 定年延長まで残れるかは、制度だけでなく、会社の業績、自分の役割、家計の必要額、心身で決まります。残るなら、年ごとの収入の見通しと撤退ラインを書いておきます。
法律が決めていること
65歳までの雇用確保(義務)
高年齢者雇用安定法により、会社は次のいずれかの措置をとらなければなりません。
- 定年を65歳まで引き上げる
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長)を導入する
- 定年を廃止する
継続雇用制度の対象は、原則として希望する人全員です。
70歳までの就業確保(努力義務)
2021年4月からは、70歳までの就業の機会を確保する努力義務も加わりました。定年の引き上げ・廃止、継続雇用のほか、業務委託契約や社会貢献事業に従事できる制度といった、雇用によらない方法も選択肢に含まれます。努力義務なので、会社によって対応は分かれます。
定年の年齢
定年を定める場合、60歳を下回ることはできません。
会社に残り続けるときによくある例
以下は、指南記事や報道でよく紹介される例です。会社ごとに違うので、自分の会社の就業規則・賃金規程・人事制度で確かめます。
- 役職定年:50代半ばなど一定の年齢で管理職を外れ、給与が下がる。
- 60歳以降の再雇用:定年でいったん退職し、嘱託や契約社員として1年ごとの契約で再雇用される。給与が60歳前より大きく下がる例がよくある。
- 仕事の変化:後輩の指導役や補助的な仕事に移る、勤務地や部署が変わる。
- 評価の扱い:昇給・賞与の仕組みが現役世代と別になる。
「65歳まで雇われる」ことが保証されていても、その間の給与や仕事の中身までは保証されていない、と考えておくのが無難です。
再雇用で給与が下がったときの給付
雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で、60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がった人に支給される給付です(雇用保険に5年以上加入していたことなどの条件があります)。支給率の上限は、2025年4月1日以降に60歳になる人から、賃金の15%から10%に引き下げられました。それより前に60歳になった人は、従来のままです。
この給付は縮小の方向にあります。再雇用後の家計は、給付を当てにしすぎずに見積もります。
生き残れるかを見通す手順
1. 自分の会社の制度を確かめる
- 定年は何歳か。65歳まで引き上げか、継続雇用か
- 役職定年はあるか。何歳で、給与はどうなるか
- 再雇用の条件(雇用形態、契約期間、給与の決め方、仕事の中身)
- 70歳までの就業確保について、会社はどう対応しているか
2. 年ごとの収入を書き出す
今の年齢から65歳(または70歳)まで、1年ごとに「見込み年収」を並べます。役職定年、再雇用、高年齢雇用継続給付、年金の受給開始(第16章)を入れて書くと、どこで家計が苦しくなるかが見えます。
3. 退職勧奨の条件と比べる
今、割増退職金を受け取って辞める場合と、定年や再雇用まで残る場合とで、生涯の手取りと心身の負担を比べます(第13章)。残る道には、次の募集でより条件の悪い勧奨を受ける可能性や、配置転換などの茨もあります(第14章)。
4. 撤退ラインを決める
「役職定年で給与が○%以上下がったら」「再雇用の条件が○○だったら」「次の希望退職の募集が発表されたら」など、辞める準備に入る線を先に書いておきます。
会社そのものが続くか
定年まで残るには、会社や事業が続くことが前提です。赤字リストラが続いている、事業の売却・撤退が発表されている、といった場合は、制度があっても残り続けられる見通しは立てにくくなります(第3章)。
相談先
- 会社の人事部門(定年・再雇用の制度)
- ハローワーク(高年齢雇用継続給付)
- 年金事務所(年金の見込み額)
この章で記録しておくこと
- 就業規則・賃金規程・人事制度で確かめた定年・役職定年・再雇用の条件と、確かめた日
- 65歳(70歳)までの年ごとの見込み年収の表
- 退職勧奨の条件と、残る場合の比較
- 決めた撤退ラインと日付
この章のチェックリスト
- 自分の会社の定年・継続雇用の制度を確かめた
- 役職定年と再雇用の給与の決め方を確かめた
- 65歳までの年ごとの見込み年収を書き出した
- 高年齢雇用継続給付の条件と支給率を確かめた
- 辞める場合と残る場合の生涯の手取りを比べた
- 撤退ラインを記録した
事実の確認表
| 主張 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|
| 65歳までの雇用確保措置(定年引上げ・継続雇用制度・定年廃止)の義務、対象は原則希望者全員 | 千葉県「高年齢者の雇用」https://www.pref.chiba.lg.jp/koyou/koureisha/kounenreisyakoyou.html /福岡労働局 資料 https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/content/contents/001246949.pdf | 2026-09-30 |
| 70歳までの就業確保措置は努力義務(2021年4月施行、業務委託・社会貢献事業を含む) | 同上 | 2026-09-30 |
| 高年齢雇用継続給付の支給率上限が2025年4月1日以降に60歳になる人から15%→10% | 労務ドットコム https://roumu.com/archives/124957.html /freee https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/continuous-benefits-for-the-elderly/(厚生労働省の改正内容の解説) | 2026-09-30 |
| 高年齢雇用継続給付は60歳時点の賃金の75%未満に低下した場合、加入5年以上などが条件 | 制度の解説として一致(厚生労働省の原典は本章では未確認) | 2026-09-30 |
| 定年は60歳を下回ることができない | 高年齢者雇用安定法の規定として広く解説(原典は本章では未確認) | 2026-09-30 |
参考にした記事
- オフィスステーション「高年齢者雇用安定法とは」https://romsearch.officestation.jp/jinjiroumu/syokuba/12498(65歳・70歳の措置)
- HRプロ https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=4168(高年齢雇用継続給付の見直し)
- DIME https://dime.jp/genre/1960197/(定年延長と再雇用の実情)